今月の地理写真
千葉県大多喜町にある「天然ガス記念館」前に灯るガス灯。写真奥の建物は、いすみ鉄道本社と大多喜駅です。
展示によると天然ガス記念館は、2011年に街並み整備事業の一環として建設の要望があったことを契機に、関東天然瓦斯開発株式会社の創業80周年事業として企画され、2013年に竣工したとのこと。写真のガス灯の他、冷暖房にも天然ガスを利用しているそうです。同館では、当地における天然ガス発見の経緯や、ガス井戸・ガス田、天然ガスの特性、天然ガスの採取や供給、併産されるヨード生産などについて、パネルや映像で学ぶことができます。
大多喜町内には、関東天然瓦斯開発の前身で、1931(昭和6)年に設立された大多喜天然瓦斯株式会社が置かれた「水溶性天然ガス企業発祥の地」の碑がある他、天然ガス発見のきっかけとなった「天然ガス井戸発祥の地」の碑があります。後者では「1891(明治24)年、醤油醸造業を営む山崎屋太田氏が屋敷内に水井戸を掘ったものの、泡を含む茶褐色の塩水ばかりが出るので、気落ちして煙草を何気なく水中に投げ捨てたところ、水泡が青白い炎を上げて盛んに燃え出した」という天然ガス発見の経緯が説明されています。
地理院地図をみると、千葉県一帯には南関東ガス田に由来する「油井・ガス井」の地図記号がいくつもみられます。自然地理学、地域産業史、まちづくりへの活用、日本のエネルギー自給や国際情勢など、ミクロからマクロまで、地理学のさまざまな分野やスケールでアプローチできる題材です。
エネルギー価格高騰の折、皆さんも現地を訪ねて、エネルギーと地域の関わりについて考えてみては如何でしょうか。
(2023年1月 山田撮影)