今月の地理写真
岐阜県北部の飛騨地域の中でも険しい山々に囲まれたところにある白川村荻町集落には、大小100余りの急勾配の茅葺きの合掌造りの建物が残されており、また、今でもそこで人々の生活が営まれている。夏は涼しく過ごしやすい反面、冬は豪雪地帯のため、一面の雪に覆われる。
合掌造りの建物は、ほぼ規則的に切妻屋根の妻側が南北に向けて建てられており、これは白川の風向きを考慮し、風の抵抗を最小限にするとともに、屋根に当たる日照量を調節して夏涼しく、冬は保温されるようになっている。また、大きな屋根の下は3~5階からなり、1階は広い居室空間、2階以上は屋根裏部屋の寝室あるいは作業空間となっています。また、「結」と呼ばれる住民の相互扶助組織があり、屋根の蓑き替えなどを共同して行なう慣習が残っている。
この美しい景観をなす合掌造りが評価され、1995年には富山県の五箇山とともに、「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。世界文化遺産登録以降、白川郷には国内外から数多くの観光客が訪れるようになった。
白川郷などのように、世界遺産などの登録・指定で、国内外から注目されるようになった地域では、観光客の急増によって、収益が増加した半面、交通渋滞やごみ問題、観光客のマナー違反など様々な問題(観光公害)が生じている。観光地化などの前後で地域がどのように変容したのか、また、地域の環境を保全・維持しながら、観光などの経済活動を維持するためには、地域ぐるみでどのようなことが必要なのかを検討する必要がある。
重厚感のある合掌造り
集落内を観光客が巡り歩く
集落入口の大駐車場に停車する数多くの観光バス
(2015/8 深瀬撮影)