今月の地理写真
中国・甘粛省西部,敦煌郊外にある石窟寺院である莫高窟はユネスコ世界遺産やユネスコ・ジオパークに登録されている.写真中央には莫高窟の象徴である九層楼が写っている.莫高窟は人工的に掘られた横穴群であるが,それらは岩盤に掘られたのではなく,段丘化した扇状地と現河床の間の段丘崖をつくっている扇状地堆積物に掘られたものである.この堆積物は礫と細砂やシルトからなり,完全には固結していない.すなわち,簡単に掘ることができるが,崩れやすいという問題もある.
なぜこのような地形,堆積物の場所を選んだのか,どのようにしてそのような条件の場所を見つけ出したのか,興味は尽きない.現在,甘粛省西部の石窟寺院の立地環境を,地形,堆積物,山脈・低地との位置関係から解明しようと奮闘中である.九層楼の背後には砂丘がみられる.この砂丘は植生がほとんど見られないことことから,固定はされていないと推定される.将来この砂丘の移動により莫高窟地域が覆われてしまうのかというのも解明すべき課題であろう.
(2023年8月 島津撮影)