今月の地理写真
アイルランド分裂以降,北アイルランドでは1960年代の公民権運動をはじめ,イギリスからの独立を求めるカトリック系マイノリティによる運動が激化し,1998年のベルファスト合意に至るまで「北アイルランド紛争」とも呼ばれる内戦状態が続いた.その主な舞台となったのが北アイルランドの首都であるベルファストである.
多くの犠牲者を出したベルファストでは,イギリス連合維持派のユニオニスト-プロテスタント系地区と,アイルランド島独立派のナショナリスト-カトリック系地区の間に壁やゲートなど様々な形をした「平和の壁,Peace Wall」が建てられた.中でも,最大のプロテスタント系地区であるフォールズロード(Falls Road)と最大のカトリック地区であるシャンキルロード(Shankill Road)の間に建てられた平和の壁が最も有名である.
現在でも平和の壁は撤去されることなく観光名所となっているが,その付近では未だ緊張感が漂う.平和の壁には,各自の立場を表した歴史的・政治的内容を含む壁画が描かれてきたが,近年では,プロテスタント系地区側に面したキューバーウェイ(Cuper Way)沿いで撮影した写真に示すように,スポーツや音楽など文化的内容を描いた壁画も現れつつある.
(2015/8 金撮影)