今月の地理写真
北九州市小倉北区は、市内7区の中心地域となっており、北九州市役所や小倉駅がある(地図1)。
地図1 北九州市小倉北区の地図(地理院地図を使用。番号1~5は写真1~5の撮影方向を示している。)
中心市街地の形成は、1602(慶長7)年に細川忠興による築城と京都を模した碁盤の目状の城下町整備(地図2)に始まる。
地図2 国立公文書館デジタルアーカイブ 正保城絵図:豊前国小倉城絵図(部分)
中心商業地域の京町・堺町や小倉城址北側の室町などの城下町時代から残る地名は、忠興の生地である京都に因んだとも言われている。中心商店街の一部をなす魚町銀天街では、北九州ESD協議会(北九州市は2018年4月にOECDの「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に認定された)との連携でSDGs商店街を目指す活動がされており、「第1回SDGsクリエイティブアワードGOLD AWARD賞」(2018年)や「第3回ジャパンSDGsアワード 内閣総理大臣賞」(2019年)を受賞している。魚町銀天街のアーケードにはSDGsの垂れ幕が掲げられている(写真1)。
写真1 魚町銀天街のSDGsの垂れ幕
小倉城は1837年に城内からの火災によって全焼し、その後天守閣は再建されていなかったが、1959年に現在の天守閣が再建され、現在では小倉北区の観光の核となっている(写真2)。
写真2 小倉城址
小倉城址の北側には「北九州市ルネッサンス構想事業」の一環として、2003年に大型複合商業施設「リバーウォーク北九州」が開業している。ここには、サービス・商業ゾーン、文化施設・情報発信ゾーン、大学棟などの白色・赤色・黄色・黒色などの建物群が接合している(写真3)。
写真3 リバーウォーク北九州の建物群(小倉城址側)
写真3の黒色ビルの14階には、住宅地図でもお馴染みの(株)ゼンリンの「ゼンリンミュージアム」(2020年4月オープン予定であったが延期中)があり、「歴史を映し出す地図の博物館」というコンセプトのもとに展示の企画が予定されている。この展示室から眼下に流れる紫川を見ると、擬宝珠の欄干の常盤橋(人道橋)がある(写真4:トップ写真)。近世の常盤橋は、江戸時代の長崎街道や中津街道・秋月街道・唐津街道・門司往還(小倉の五街道)の起点・終点となっていた。この橋から西側にあたる室町の道路南側に「小倉縣廳ノ址」という石柱が建てられている(写真5)。ここには明治4年に「西海道鎮台」が設置された後に明治9年までの4年間「小倉縣廰」が置かれており、かつての行政の中心地となっていた。
写真5 小倉県庁の址の石柱
また、写真4の右端の高層ビルは小倉駅新幹線口(北口)前の「リーガロイヤルホテル小倉」(地上30階・132m・1993年竣工)である。この周辺地域では小倉駅新幹線口地区整備構想(2015年改訂)に基づき都市再開発と地域活性化策が行われ、小倉記念病院・西日本総合展示場・北九州国際会議場・ミクニワールドスタジアム北九州などが立地している。
写真4の遠景には、多数の煙突と高炉の見える「日本製鉄株式会社 八幡製鐵所製鋼部 小倉製鋼工場」が望め、この周辺には関門海峡から洞海湾へと続く工業地帯が広がっている。さらにこの製鋼工場の遠くには関門海峡を挟んで対岸の下関市彦島も見え、写真中央上の昼間障害標識塗装(赤白)煙突の左側には、関門橋(関門自動車道:吊り橋構造)の両端にある白色の主塔上部がうっすらと見えている。
このように北九州市小倉北区は、歴史地理・交通地理・都市地理・工業地理・商業地理・観光地理などの分野での、興味深い探訪地域となっている。
【参考】
国立公文書館デジタルアーカイブ 正保城絵図;豊前国小倉城絵図
魚町銀天街HP:「第1回SDGsクリエイティブアワードGOLD AWARD賞」・「第3回ジャパンSDGsアワード 内閣総理大臣賞」
(2019/8 松井撮影)