今月の地理写真

雪降り積む静寂の大谷崩

雪降り積む静寂の大谷崩

 静岡・安倍川上流域に位置する大谷嶺(標高1,999m)の南側は,幾度も崩壊を起こしてきた「大谷崩(おおやくずれ)」と呼ばれる崩壊地である.特に1707(宝永4)年の宝永地震で大規模な崩壊を起こしたとされ,1858(安政5)年の飛越地震による立山の「鳶山崩れ」,そして1911(明治44)年に長野・稗田山が山体崩壊を起こしたことによる「稗田山崩れ」と併せて「日本三大崩れ」と称されている.

 安倍川上流域に位置する赤水の滝(写真)付近では,1707年の大崩壊によって発生した土石流の流下に伴う堆積物で流路が埋積されたことで,安倍川の流路がショートカットして現在の赤水の滝の原型が形成された.南海トラフ地震による中部山岳地域での大規模崩壊と土石流の流下が,山間部の河川やその周囲の地形に極めて大きな影響を与えた一例である.

 大谷崩の斜面は,砂防工事や植樹による斜面の保護が進んでいるが,身延山地の断面として,断層や褶曲が発達した瀬戸川帯(四万十帯)の砂岩と泥岩の層が認められ,付加体という“日本の基盤”の姿を直接捉えることができる.岩塊だらけの荒涼とした場所だが,四季折々の景色が広がる安倍川のはじまりの地の一角でもある(写真).

(2017/1 宇津川撮影)

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赤水の滝.写真右手側に土石流堆積物が見える(2013/9撮影)

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初夏の大谷崩(2014/5撮影)

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早朝に見る紅葉の大谷崩(2014/11撮影)

(3段組みの各写真:クリックすると拡大表示されます 宇津川撮影)

撮影場所

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