今月の地理写真

蓬莱橋 -近代日本を支えた橋-

蓬莱橋 -近代日本を支えた橋-

蓬莱橋は,静岡県島田市を流れる大井川に架かる木造歩道橋です。これまで多くの映画やドラマで撮影地に利用されましたので,実際に訪れたことはなくても,見覚えのある方も多いのではないでしょうか。全長897.4メートル・幅2.4メートルの蓬莱橋は,「世界一の長さを誇る木造歩道橋」として,1997年にイギリスのギネス社により認定されました。また,「厄無し=897.4」「長い木=長生き」との語呂合わせも手伝ってか,その御利益にあやかる観光スポットとしても知られています。しかし,写真撮影は1月上旬の夕暮れ時だったため訪れる人もまばらで,対岸(右岸)の牧之原台地や大井川河川敷は,残念ながら寒々しく映っています。

 江戸時代,幕府は大井川に架橋や渡船を許さず,東海道の往来者にとっては交通難所の一つでした。代わりに川会所と川越人足(かわごしにんそく)が整備され,人足の肩や彼らが担ぐ神輿のような「連台」に乗って川を越していました。そのため,増水すると「川留め」にされ渡河禁止となったことから,“箱根八里は馬でも越すが,越すに越されぬ大井川”と「箱根馬子唄」に唄われたわけです。

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 この蓬莱橋が架橋されたのは1879(明治12)年1月。既に140年が経過したことになります。この橋の建設は,対岸に見える牧之原台地の開発-茶園開墾-と深い関わりをもっていました。幕末開港以降,生糸とともに重要輸出品となった茶は各地で生産が盛んになりましたが,士族授産により開墾された茶園も多い牧之原台地は,幾多の困難を乗り越えて日本のもっとも代表的な茶業地として知られるようになりました。橋名の由縁と言われる「宝の山」とは牧之原台地を指していたわけです。蓬莱橋は近代日本の歩みを見守りつつ,今なお農作業に往来する人々を支えています。

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(参考:島田市ホームページ・島田市観光協会ホームページ)

(2020/01 岡村撮影)

撮影場所

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