今月の地理写真
愛媛県松山市の東に位置する道後温泉は、兵庫県の有馬温泉、和歌山県の白浜温泉と並んで日本最古の温泉の一つである。また、夏目漱石の小説『坊っちゃん』の舞台となったことで、全国的にも知られるようになった愛媛県の代表的な観光地である。道後温泉駅から商店街を抜けた先にある「道後温泉本館」は、道後温泉のシンボルスポットとなっている(※2019年1月~2024年12月まで、休憩室がある2階以上は保存修理工事中)。
1994年には日本の公衆浴場として初めて国の重要文化財に指定されながらも営業を続け、四季を問わず、現在でも国内外から湯治に訪れる人が多い人気の温泉である。道後温泉本館をはじめとした3つの外湯と宿泊施設、土産物店や飲食店などがあるコンパクトな温泉街が形成されている。また、松山市中心部にある松山市駅からは、普通の路面電車の他に、レトロなディーゼル機関車「坊っちゃん列車」も走っている。
温泉観光地というと、農山村地域にある場合が多いのだが、道後温泉は都市部にある日本でも珍しい温泉観光地である。都市という空間の中で、温泉・宿泊施設とその周辺商業地区がどのように変化してきたのか、観光の形態が団体旅行から個人・家族旅行へとシフトした状況下で、観光客の旅行行動を把握し、観光客を集客するために地域ぐるみでどのような取り組みが行われているのかなどを捉える必要がある。
周りの宿泊施設から道後温泉本館へ訪れる浴衣客
松山市中心から道後温泉まで走る「坊っちゃん列車」
(2013/2 深瀬撮影)