今月の地理写真
南太平洋のフランス領,ニューカレドニアの本島(グランドテール島)から北東へおよそ100kmにあるウベア島は環礁が隆起してできた島である.写真にはその内側の砂浜とラグーンが写っている.森村桂の旅行記『天国にいちばん近い島』(1966)とその後これをもとにした大林宣彦監督,原田知世主演の同名の映画(1984)で有名になった場所である.2019年度「海外調査法およびフィールドワーク」の授業で訪れた.
ニュ-カレドニアはインド・オーストラリアプレート上に乗る,ゴンドワナ大陸の一部であるが,ウベア島は,沈水時に形成された環礁が隆起したため,島はサンゴ石灰岩でできており,環礁内側のラグーンには海底のサンゴや貝の破片と陸のサンゴ石灰岩から供給された砂が堆積していて,世界の他の地域にはどこにも見られないような真っ白な砂浜が続いている.元々は環礁であるものの,最高標高が40m近くあり,標高5m以上の土地が多くを占めるため,ツバルのフナフチ島とは異なり,地球温暖化による海面上昇があったとしても島全体が水没することはない.しかし,最近ときどき起こる強い風と波によって外洋に面した海岸線では侵食が発生し,浜辺の木々が倒されている光景を目にした.これが気候変動によるものかどうかはわからないが,何らかの環境変化が生じているのは確かであり,注視していく必要がある.
「海外調査法およびフィールドワーク」の現地報告はこちら.
(2019/9 島津撮影)