かつて人びとの暮らしを支え、生態系の維持に重要な役割を担った里山。そこは薪や炭などの燃料や建築資材を得る場所として、また農作業に必要な牛馬に与える飼料や水田耕作に必要な肥料(刈敷)を獲得する場所として、常に人の手によって管理される空間でした。しかし、化学肥料の普及、高度経済成長期における農業機械化の進展や燃料革命によって里山の役割は大きく変化し、都市近郊では住宅地に開発転用されたり、あるいは利用価値を失って荒地化したところも多く見られます。
“里山の変貌は地域によってどのような違いがあるのか?”という問いかけも地理学では重要でしょう。近年、里山は地域の人びとの暮らしに潤いを与え持続可能な社会を支える重要な空間として再認識されるようになり、文化的景観としてその保全に大きな関心が注がれています。そこでも地理学の活躍が期待されています。