海外調査法およびフィールドワーク

海外調査法およびフィールドワーク(2年以上選択科目)

担当教員:片柳勉(専門分野:都市地理学)

授業の概要

2年生以上の選択科目「海外調査法およびフィールドワーク」は、集中講義と海外でのフィールドワークがセットになった科目です。

ここでは、イギリスで実施したフィールドワークを中心に授業を紹介します。 実習テーマを「イギリスにおける都市・農村景観の保全と活用」と設定し、イギリスの景観を読み解くことに主眼をおきました。現地では、主にイギリスの都市景観、田園景観、自然景観の観察を行いました。下の図は、事前説明の際に配布したフィールドワークの実施要領(案)と、実際の移動ルートを示したものです。

  • 実施要項

フィールドワークの実施

それでは、早速フィールドワークを始めましょう。

1. ロンドン

フィールドワーク初日の夕刻にロンドンに到着した私たちは、翌2日目にウェストミンスター、シティ、グリニッジなど、ロンドンの街中をひと通り歩きました。歩くことによって大都市ロンドンの空間的広がりを体感し、町並みの観察から地域の特色を把握することが目的です(写真:金融街シティのバンク・コーナー)。

三日目は、地下鉄を使ってロンドン北部のプリムローズ・ヒルを目指しました。丘の上からロンドンの町を俯瞰(ふかん)するためです。ロンドンには、「戦略的眺望保全」という政策によってセント・ポール寺院と国会議事堂への眺望が確保されている場所が10か所ありますが、プリムローズ・ヒルはその一つです。この丘の標高はわずか55mですが、頂上からは約4km先にあるセント・ポール寺院と国会議事堂の両方を確認することができます(写真:プリムローズ・ヒルからの眺望)。

2.西イングランドと南ウェールズ

1)コッツウォルズ地方

それでは、いよいよロンドンを離れて地方に出かけることにします。

4日目に向かった西イングランドは長らくイギリスの後進地とされてきましたが、現在では観光地化がかなり進んでいます。

テムズ川の源流もある西イングランドのコッツウォルズ地方はイギリス屈指の観光地です。コッツウォルズの村々は中世には羊毛の生産と交易で栄えましたが、石炭を産出しないことから産業革命に取り残されました。しかし、そのことが逆にコッツウォルズにイングランドの典型的な農村景観を残すことになり、後に観光地として注目されるようになりました(写真:チッピン・カムデンの町並みを観察する学生)。

2)ヘイオンワイとビッグ・ピット

5日目は、ウェールズのヘイオンワイを目指しました。この町は古本による町おこしで有名になったところです。ヘイオンワイに入ると道路標識や案内板などにはウェールズ語と英語が併記され、この町がウェールズ領内にあることを知らされます。ヘイオンワイでの調査の対象は、町おこしと町並みです(写真:城壁を利用したヘイオンワイの古本屋)。

その日の午後は、世界遺産に登録されている旧炭坑のビッグ・ピット(大坑道の意味)を見学しました。ビッグ・ピットは、閉山から3年後に体験型の炭坑博物館としてオープンしました。地下100mにある廃坑の中では、元坑夫から過酷な労働など当時の話を聞くことができます。

3)世界遺産バース

フィールドワーク6日目は、温泉都市バースを訪れ歴史的遺産の観光化についての調査を行いました。バースの町は、3階建てのジョージアン様式の建物でほぼ統一され、さながら町全体が博物館のようです(写真:バースの町並み)。このほか、ローマ時代の温泉跡などの古代遺跡も見逃せません。この町では誰しもが観光客になってしまいます。

7日目にはストーン・ヘンジに立ち寄り、その巨大さに感動しました。つい観光客気分になってしまいましたが、再びロンドンに戻って調査を行うことにしましょう。

8日目に、学生は各自が事前に設定したテーマにしたがって調査を行いました。テーマは、「ロンドン・ドックランズの再開発」「金融街シティ地区の景観」「ロンドンの中心商店街の特徴」「ロンドン都心部における住宅開発」「ロンドンの鉄道交通の現状と課題」などです。

3. 報告書の作成

中には、今回初めて海外を経験する学生もいましたが、大きな事故も無く、充実したフィールドワークを行うことができました。帰国後、学生たちは報告書の作成に取りかかり、年度の終わりにはどうにか完成することができました(写真:フィールドワーク報告書)。

フィールドワークの申込みから報告書の作成まで約1年間を要しましたが、参加した学生には大きな自信と思い出が残ったようです。