担当教員:長坂政信(専門分野:経済地理学・地理教育)
地理調査法は、2年生の必修科目です。約15人ずつのクラスに分かれて3泊4日の日程で行われます。なお、実習する地域や授業内容はクラスの先生によって異なります。ここでは、長坂先生が担当したAクラスの授業を再現します。
授業では、地理学の基礎として、以下のことを学びます。
この日は初日なので、地域の概要を把握するために大阪市の都市構造を勉強しました。集合場所はJR西日本大阪環状線の鶴橋駅。ここは大阪市生野区で、人口約14万人のうち、韓国・朝鮮籍の人口が4分の1に達する日本で最大のコリアンタウンとして知られています。駅周辺にはホルモン・焼肉やチジミなどの韓国料理の店、チマ・チョゴリなどの洋品店など数百軒が密集し、迷路のようになっています。次に、大阪城の天守閣から市街地を展望し、その景観から読み取れる大阪市の都市構造について考えました。最後に、全長2.5kmと日本で最長の商店街である天神橋筋商店街を歩きました。ここでは、店での聞き取り調査をしました。店の種類・商品・通りの特徴などを観察し、開業年や客層などについて聞き取り調査をしました。
この日は様々な産業の発展過程や災害と地域復興をテーマとして、実習と現地見学を行いました。午前中には日本で初めてインスタントラーメンを発売した日清食品のインスタントラーメン発明記念館を見学しました。ここでは、小麦粉からラーメンを作る体験やカップヌードルに載せる具材を自由にトッピングして自分だけのカップ麺を造ることもできます。このインスタントラーメンの発明とその展開を産業発展過程の例として学びました。その後、宝塚で昼食を取り、午後には六甲の宮水を使った灘の酒の資料館を見学しました。この一帯は、1995年の阪神・淡路大震災で壊滅的な被害に遭いました。資料館では震災による酒造業の被災とその復興についての話があり、被災者の方々の生活が元に戻るには、まだまだ時間がかかることを学びました。
3日目には大阪の中心商業地の調査をしました。午前中は心斎橋から道頓堀までの専門商店街を通り、大阪独特の看板やのれんを見て、大阪の文化を実感しました。道頓堀にあるグリコの看板は大阪市指定景観形成物に指定されていることの説明があり、大阪の都市景観と食の関係について議論しました。その後、夫婦善哉で有名な法善寺の水掛不動を見学し、また、フランスのエッフェル塔をモデルに作られた通天閣では、大阪市南部の都市構造について、大阪城天守閣からの景観と比較して考察しました。夕方には、北の中心地梅田の阪神デパートで大阪名物や販売されている食材などを観察し、大阪の食文化の地域性について調査しました。
地下鉄とモノレールを乗り継いで、大阪万博記念公園内にある国立民族学博物館を見学しました。モノレールの車窓からは日本初のニュータウンである千里ニュータウンが見えます。完成から30数年が経過した千里ニュータウンでは、建物の老朽化や住民の高齢化などの新たな都市問題が生じています。ここでは都市化と都市問題について考えました。大阪万博記念公園は1970年に開催された大阪万博の跡地で、岡本太郎作「太陽の塔」で有名です。国立民族学博物館は、日本を含む世界各地の生活文化を象徴する道具や写真などが展示され、中でも食に関する展示を注意深く見学しました。その後、現地で解散となりました。
現地調査終了後のゼミでは、調査結果を全員で討論してレポートにまとめる作業が中心となります。